受験生向け研究绍介
二村 竜祐
理学科 化学コース 物理化学分野
微小空间を最大限に利用しよう!
现在の研究テーマ:ナノ空间の创製と现象解明
皆さん「ナノ」という言叶を闻いたことがあるかもしれません。「小さい」と意味で、身近にある电化製品などでも名前として使われています。ナノは科学から一般に浸透した言叶で、10-9 (= 0.000000001; 0が9つ並ぶ)を表し、物理単位と一緒に出てきます。1ナノメートル(0.000000001 メートル)や1ナノ秒(0.000000001秒)というのは非常に小さなスケールの大きさや時間を表すのに便利な表現です。これから派生してナノは小さなものを表す象徴的な言葉として身近に定着しました。我々人間にとって1ナノメートルは目では捉えることができないほど非常に小さな大きさですが、化学の主役である分子たちにとって1ナノメートルは自分たちより少し大きなサイズになります。私たちはナノメートルサイズの空間に閉じ込められた分子集団の振る舞いについてX線散乱測定などの測定手段を用いて研究をしています。この「ナノ空間」で、分子たちは通常では見せてくれない顔を見せてくれます。最近の私たちの研究では「塩」の一種であるイオン液体をナノ空間に閉じ込めると、非常に興味深い性質を示すことがわかってきました。

カーボンナノ空间では、プラスのイオンとマイナスのイオンからなるイオン液体のクーロン力による秩序构造が一部崩れた!
「塩」というと皆さんは食塩を思い浮かべるかもしれません。确かに食塩も「塩」の一种です。食塩は化学の言叶では塩化ナトリウムといい、塩化物イオンとナトリウムイオンが规则的に并んだ结晶构造を形成しています。この结晶构造は非常に强く温度が800℃でも液体にはなりません。これはイオン间に働く强い力(クーロン力)に由来します。皆さん、中学校の理科の时间を思い出してください。「プラスとマイナスの电荷は强く引き付け合い、プラスとプラスまたはマイナスとマイナスの电荷同士は强く反発し合う」というクーロンの法则を勉强したと思います。このクーロン力のため塩化ナトリウムはプラスのナトリウムイオンとマイナスの塩化物イオンが强く引き付けあい、交互に并んだ结晶构造を形成するのです。一般にイオン结晶(塩)は融点が高く、数百度に加热しても结晶构造を保ちます。しかしながら近年、イオン结晶と同じようにプラスとマイナスのイオンのみから构成されていながら、室温でも液体である「イオン液体」という新しい物质が合成され、注目を集めています。これは食塩水とは异なり、水を加えていなくても液体なのです。つまり纯粋に「イオンのみからなる液体」です。このイオン液体はイオンならではの特长を数多く有しています。例えばイオン液体は添加物なしでも电気を流すことができます。皆さん水は电気を流すと思っているかもしれませんが、実は水はイオンを溶かさないと电気を流しません。このような特长により、イオン液体は近年様々な応用分野から期待を集めています。
我々はこのイオン液体をナノ空间に闭じ込めることで、イオン液体の新たな侧面を见ることに成功しました。壁がカーボンで形成されたナノ空间では、イオン液体のクーロン力による规则构造が崩れるのです。先に述べたようにクーロン力は非常に强い力であり、液体であるイオン液体でもプラスイオンの周りにマイナスイオンが近づいた规则构造を形成しています。それがナノ空间ではマイナスイオンの周りにマイナスイオンが近づけるのですから、いかにナノ空间が特殊な空间であるかということがわかるかと思います。このことはナノ空间の壁であるカーボンが持つ高い电気伝导性に由来しています。カーボン细孔壁がイオンの反対の电荷に帯电するために、同じ电荷のイオン间の反発力が弱められ、同种イオン同士が近づくことが可能になります。このように、研究では一见すると常识とは矛盾する现象が起こり我々科学者の头を悩ませますが、なぜそのようなことが起こるのかを突き詰めて考えて理解するのが科学の醍醐味(だいごみ)だと思います。わからなかったことが理解できるようになると、他のことでは得られないような达成感が得られます。
我々の次の目标として、ナノ空间を持つ「多孔性材料」とそのナノ空间に「吸着した分子集団」が合わさることで初めて生じる新たな机能を见出し、有効に利用することを目指しています。多孔性材料、また吸着分子のみでは生じない机能を、ナノ空间と吸着分子のシナジー効果によって発现させるのです。そのためには、どんな机能が期待できるのかを考え、多孔性材料と吸着分子の种类などをよく考えて研究をスタートさせる必要があります。さらに、ナノ空间で吸着分子がどんな构造になるのか理解も必要でしょう。我々の研究はまだスタートしたばかりです。

電場を印加した時のスーパーキャパシタ内部での分子集団の構造変化を捉えた(a)電場印加によるマイナスイオン周りの第一配位圏の各イオンの割合の変化(b)作成したin-situ X線散乱セル。スーパーキャパシタは多孔性材料である多孔性カーボンと吸着分子であるイオン液体により電気エネルギーを蓄えることができる。多孔性材料だけもしくはイオン液体だけではスーパーキャパシタにはならない。
高校生へのメッセージ
化学の道に进んだ理由
私は记忆することが苦手です。高校や中学で习った歴史の年号は大半忘れてしまいました。元素记号やイオン化列などから化学は暗记科目と思う人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。というか、少なくとも私にとっては暗记科目ではありませんでした。高校化学では、过去の伟人たちが実験を繰り返し、得られたデータから导き出された数多くの法则などを勉强しているかと思います。化学では膨大なデータを1点1点覚える必要はないのです。つまり大きな枠である法则さえ理解できれば、あとはそれにあてはめさえすれば问题は解けてしまいます。元素表も法则性があって元素が配置されていることを理解すると、私にはすんなり覚えられました。今思うと私は膨大なデータから规则性を导き出した过去の伟人たちの観察眼に兴味を持ち、化学の道に进もうと思ったのかもしれません。
大学进学に向けて
高校卒业后就职するのも选択肢の一つだと思いますが、大学进学も1つの选択肢です。どちらが正解ということはありません。ただ大学教育に関わる者としていえることは、大学へ行くと自分でできることの可能性が広がります。それは勉强もそうですが、人とのつながりもそうです。大学に进学する人はまだ自分が何をしたいのかわからないという人もいるかと思いますが、私はそれでもいいと思っています。大学にいるうちに楽しいと思うことが出てくるかもしれません。その时に、自分が持っているスキルが足りなければ勉强し、自分を高めていく。それが高校までの教育とは异なる、大学教育なんだと思います。大学教员はそんな大学生をサポートする存在です。
私の授业の内容
化学実験や物理化学実験を担当しています。座学と违って手を动かさなくてはなりませんが、手を动かすと头が回ってきます。また実験でいろんな経験を积むことで、自分のできることが広がっていきます。学生の皆さんにはそんな実験の醍醐味を知ってもらいたいです。