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受験生向け研究绍介

中山 一昭

数学科 自然情報学分野

非线形性に潜む构造

现在の研究テーマ:涡の可积分性
流体に生じる涡はその规模によって异なる様相を呈しますが,ここでは気象の用语で言うところの尘别蝉辞-蝉肠补濒别な涡,つまり竜巻を考えましょう.竜巻は场合によっては多大な被害をもたらすことから,その研究は非常に重要であると思われますが,现在のところ発生を确実に予想するのは难しいようです.しかし一旦発生した竜巻がどのような动きをするのかは或る程度理论的に解明出来ます.即ち最低次の近似として非线型厂肠丑谤?诲颈苍驳别谤方程式と呼ばれるものに帰着させることが可能です:袄摆
i\frac{\partial\psi}{\partial t} +
\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}
+ \frac{1}{2}\lvert\psi\rvert^2\psi = 0
\]この方程式の最大の特徴は完全可積分性で,方程式の「自由度」分の保存量を持ち,それゆえソリトン解や \(\vartheta\) 関数解等の厳密解を書き下したり,誤差が入りにくい数値計算アルゴリズムが存在する,といった良い性質を持ちます.実際の竜巻に対しては方程式を導く際に省略した効果が効いてくるでしょうけれど,目安を与えるという意味では十分でしょう.要点は涡のような复雑な现象の中にも数学的に优れた构造が潜んでいて,现実は理想からのずれとして捉えることが可能だということです.

さてこのようなうまい话をこれだけで终わらせるのは惜しいことです.そこでこの话を拡张することを考えたいのですが,一つの方向として离散化というのが考えられます.これは「折れ线状の竜巻」を考えることに相当します.いささか现実离れしているように思えますが,连続モデルの误差なしの厳密な数値计算アルゴリズムを与えるという点で重要です.他の方向として高次元化があります.竜巻というのは谓わば细长い一次元的涡な訳ですが,これを二次元以上にするのです.数式を书き出すと复雑になるので図の一つをお见せすることで満足しましょう.
研究领域:非线型力学系
「非线型力学系」は大きく分けて可积分系と非可积分系とに分类されます.

狈别飞迟辞苍以来,自然を记述する言叶が微分方程式になると,多くの现象が微分方程式として定式化され,その解が研究されて来ました.このうち调和振动子のような线型力学系の场合は容易に解の性质が知れてしまうので简単です.演习问题としても取り上げることが可能です.

问题は方程式が非线型の场合で,途端に解くのが难しくなります.代表例として惑星の运动を见てみます.良く知られているようにいわゆる二体问题は中心力一体问题袄摆
\frac{d^{2}r}{dt^{2}} = -\frac{GM}{|r|^{2}}\frac{r}{|r|}
\]に帰着されます.これは \(r\) に関して非線型な方程式ですが,やはり良く知られているように解が二次曲線になることが導かれます.では天体の数が一つ増えたらどうか,ということになる訳ですが,Poincaréたちによって示されたように三体問題の解を一般に閉じた形で書き表すのは不可能です.

方程式が解ける場合と解けない場合の差異は大まかに言って第一積分が必要なだけ求まるかどうかという点にあります.中心力一体問題の場合はエネルギー積分,角運動量積分,Laplace 積分の7つの第一積分(独立なのは5つ)により軌道が定まり,時間発展が求積法に帰着されるという構造だったのに対し,三体問題の場合はLaplace 積分が欠落してしまうために軌道が定まらないという状況になっています.第一積分が十分な数だけ存在して軌道が定まる系が可積分系,そうでない系が非可積分系ということになります.この言葉を使えば中心力一体問題は可積分系,三体問題は非可積分系です.

可積分性と非可積分性に関するもう一つの重要な例はこまの運動です.固定点を持つこまの一様重力下での運動はEuler-Poisson 方程式\begin{equation*}
\left\{\begin{array}{@{}r@{\,}l}
I\dfrac{d\omega}{dt} &= I\omega×\omega + \gamma×r_{0}
\\
\dfrac{d\gamma}{dt} &= \gamma\times\omega
\end{array} \right.
\end{equation*}で書き表されます.但し \(I=\mathrm{diag}(I_{1},I_{2},I_{3})\) は慣性テンソル,\(r_{0}=(x_{0},y_{0},z_{0})\) は固定点から見た重心の位置ベクトル.この場合はやや技術的な方法を援用することで四つの第一積分の存在は直ちに知れます.故にもう一つの第一積分が求まれば良いのですが,その第一積分は現在までにEulerの場合 (\(r_{0}=0\)), Lagrange の場合 (\(I_{1}=I_{2}\), \(x_{0}=y_{0}=0\)), Kowalevskaya の場合 (\(I_{1}=I_{2}=2I_{3}\), \(y_{0}=z_{0}=0\)) の3通りしか知られていません.

その後Poincaréが三体問題の研究に続いてホモロジー等のトポロジカルな概念や方法を生み出し,それを力学系の研究へ持ち込んだことは良く知られていますが,これは現在のカオス力学系の研究へと繋がります.一方,可積分系に関してはKowalevskayaが彼女の解を発見したのが1889年.その後Painlevéの研究(1893年)等があるものの,本質的に新しい進展は 1965 年まで待たねばなりません.

1965年はZabuskyとKruskalがKdV方程式に対する孤立波解とその安定性を見出した年です.それを彼らはソリトンと名付けました.そしてさらにKdV方程式に対する逆散乱法が見出され (Gardner,Green,Kruskal,Miura; 1967年), その初期値問題が解かれるようになりました.KdV方程式は非線型偏微分方程式であって無限自由度の力学系と解釈出来ます.またKowalevskayaのこまに続く非自明な有限自由度の非線型な積分可能系として戸田格子が発見されました (Toda; 1967). これらが現在の可積分系の研究の始まりと言えます.その後の発展は急速かつ広範で,とても紹介し切れるものではありませんが,主な研究の方向としては新しい可积分系を発见すること新しい解を発见すること可积分性の由来を明らかにすること等が中心のようです.个人的には他分野への応用に関心があります.

非线型というのは线型の场合と异なって一般的な手法というものが存在せず非常に难しいのですが,そこには线型では生じ得ない面白い现象が现れます.最初に绍介した涡もそうですし,最近流行っている脳の情报処理だって非线型です.またいわゆる地球温暖化も地球というシステムの非线型性を人类が良く理解しないまま経済活动を拡大してしまった结果と言えそうです.非线型力学系というのは何か新しい结果を出すのに长い期间を要する根気の必要な分野ですが,やりがいのある分野でもあります.
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